KUROMIMIには本が足りない。

KUROMIMIには本が足りない。

活字がないとダメ系ヲタク。小説・音楽・詩・ときどき映画。自作の小説も書いてます。

小説・海のなか(11)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 外に踏み出すと、すでに薄暮が降りていた。あれが最後の夕日だったらしい。と、殊更に赤く染まっていた夕凪の頬色が頭を過ぎる。違和感を覚えて掌を上に向けてみると、僅かに濡れる。霧のような雨が音もなく…

小説・海のなか(10)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 問いが口を離れてから、随分と長い空白が訪れたように感じた。それは問いかけ自体が無に帰っていく様な時間だった。奇妙だ。この沈黙は重くもないし、ましてや心地よくもない。だから私もなんだかまた話し始める気に…

小説・海のなか(9)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com kuromimi.hatenablog.com *** 到着してしばらく経っても、まだ小瀬家のインターホンに手を触れることを躊躇っていた。夕方とはいえ、まだ秋になりきれない日差しは首筋をジリジリと焼き始めている。何処かからか…

詩・雨音

雨の音が染み込んでいった いつかの午後 わたしはひとりだった。 どこかでささやきのように ひっそりと喰べている雨を感じながら それまでわたしの中は騒がしかった。 雨声とはまた違って うるさく やかましく 際限がなかった 雨がすべてを喰ってゆく。 何も…

詩・行き過ぎしもの

大切なものは 一呼吸ごとに くすみを増して あの時の感情を もう取り戻せない どうしようもないほど 煌めいていた一瞬 あの一瞬を 買い取るために なけなしの稼ぎを費やして そう 本当に欲しかったのは これじゃない でもね あの快楽があの苦しみに見合うか…

小説・海のなか(8)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 第五章 歪 その日のLHRでは、文化祭当日の役割分担を決めていた。私のクラスは喫茶店をやる予定だ。当日は調理班と給仕班にわかれてそれぞれにシフトを組むのだ。誰が決めたのか、女子生徒はフリルのついた可愛らし…

小説・海のなか まとめ1

どうも。 クロミミです。 今回は、先日また最新話を公開しました自作連載小説「海のなか」のまとめなどを少々していきたいと思います。よろしければお付き合いください。 いつも読んでくださっている方々、ありがとうございます。スターがつくたびウキウキし…

小説・海のなか(7)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 第4章 ダイアローグ 「それにしても、随分とありふれた娘を選んだものだ」 妖艶な女は興醒めたようにぽつりとこぼした。低く澄んだ声が虚空に広がっていった。私は女の横顔に目をやりつつその美しさにぞっとした。秀…

詩・「春の長夜」

水の匂いがした 夜の匂いだ だれかがひんやり 運んできた 生温くない 春 花冷えはとうに過ぎて 花の色も青くかわる 街灯の灯は さめざめと降り 夜のしじまを 煌々と白くする わたしの鈍い歩みだけが刻まれた 曇天の夜 こんなにも冴えない夜なのに 夜の黒は美…

ジッタスクワットって知ってるか。

お久しぶりです。クロミミです。 皆様はジッタスクワットという彫金作家さんをご存知でしょうか。 実は最近クロミミはクリーマなるハンドメイドアプリを始めたんでござるが。そこで出会ってしまった最高な作家さんについてちょっと語りたい。 上から、ジッタ…

好き嫌いと尊敬できるかは別。

今だから言えることを言いたいと思う。 実はある上司がこの上なく嫌いだった。 なぜなら彼は善いひとだったからだ。 私は善人が嫌いだ。善良であることを尊び、すべての人が和を重んじると心から信じている人間が大嫌いだ。 なぜなら、私はなぜか常に善人か…

詩・「欲しい」

あの時味わった 幸福な味を 私は今でも忘れられないでいる あの味はどんな味だったかしら 時々 尋ねられることがある。 一体何がそんなに欲しいの、って そんなのわからない わからないけど欲しいんだもの 本当は欲しいものなんてないんでしょう、 なんてい…

小説・海のなか(6)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com ※※※ 駅前の寂れた商店街をまっすぐに抜け、小さなトンネルを潜ると坂の上に市立図書館が現れる。濃い樹木の緑に石壁の白が夏の光に照らされて映えている。坂の下から図書館を見上げるのが好きだった。ふとした瞬間に…

情景を刻みつけるための詩。

先日ご近所の四国へ行ってきました。 うどん美味しかった〜! うどん大好きマンなのです。わたくし。 海にも行ってきました。 実は先日の詩で使った写真はこの時撮った写真だったりします。もう、すっごい綺麗で。この情景を何度か記録しておきたいと思って…

詩・「あなた」

どこまでも続く海原を見ていると どこかであなたが シャッターを切る音がした これは あの時撮ったのかしら 気がつかなかった 砂浜を歩いた時の感触 今でも覚えているのよ あれは波がひいた跡 どこまでもうねりが続いていた 砂浜がきらきらかがやいていた お…

詩・「ちいさな不幸」

いつも 少しだけ不幸なんです なぜかしら お母さんが 思いきり褒めてくれたときも あの人が 力いっぱいだきしめてくれたときも 猫といつまでも 日向ぼっこしているときだって どこかわたしは不幸 でもわかっているの わたしを不幸にしているのは わたし わた…

通り過ぎてきた時を想う。

先日友人Yと訪れたカフェ「カフェZ」にて古道具の手巻き置き時計を入手しました。 時計とか全然詳しくないんですけどね。 これはもう一目惚れでしたよね。 セイコーコロナの手巻き置き時計です。 文字盤の黒に銀のドットが近未来感あっておしゃれ。なんとな…

キリンジは俺の血液。

本日わたくし半休もらって職場から直で実家へ帰ったのですが。 (職場から実家まで車で2時間かかります) その間ずっと運転しながらキリンジを聞いてたわけで。 皆さん、キリンジって知ってますか? キリンジというのは堀込高樹と堀込泰行の兄弟ユニットであ…

共感だけでは限界がある。

よく書籍のレビューで酷評する際、 「この小説の主人公にはどうしても共感することができなかった」 というような内容をよく目にする。 果たして、共感する必要があるのだろうか。 そして「共感できない」ということは酷評するに値する理由なのだろうか。 わ…

詩・「愛を乞う」

どうして、と問わないでください。 わたしにはもうわかっている。 あなたが何を知りたいのか。 全てを明け渡せと言いたいのなら、 ただそこでみていて。 わたしはもう 知っているんです。 あなたもわたしも ろくでなしだってこと。 問うのは誰のためなのか …

詩・「今」

灰色の塵が 積もり積もって これからどこにゆくのだろう。 扉を開けるたびに思う。 明日は知らない明日がいい、と。 どうしようもない思いを 口にするのをやめにして 一体どれほど経つだろう。 いつになれば止むのかと 問いかけることもとうにやめた。 答え…

「驚異」を味わうことこそ読書の真髄。

先日、わたしは以下の記事で小説における文章について、「平易な言葉を使って優れた文章を描くことが理想」ということを言った。 kuromimi.hatenablog.com 今回はこの記事に補足してもう少し深い話をしたいと思う。 この記事において、わたしは難しい言葉に…

小説を描くのに必要なのは、言い回しの巧みさ。

どうも。クロミミです。 先日、ある方からコメを頂いたときに考えたことについて今回は語っていきたいと思います。 皆さんは、小説を描くときにたくさんの語彙は必要だと思いますか? わたしは必要だと思います。 ただし、この語彙という言葉に惑わされては…

「言えないから」小説を描く。

以前私はこんな記事を書いた。 kuromimi.hatenablog.com kuromimi.hatenablog.com この二つのテーマは自作の小説でもよく扱うものだ。 でも、こんな記事を書けるならわざわざ小説書く必要なくない?と思う人もいると思う。 では、なぜ私は小説を描くのだろう…

小説描くなら徹底的に推敲しろ。

今回は、小説を描く上で必ずしたほうがいい推敲という工程について語りたいと思います。 わたしは今「海のなか」という小説をこのブログで連載しています。実はこの作品、元々は短編小説なのです。 もとになった短編小説はわたしが高校一年の頃に描いたもの…

小説の書き方に正解などない。

どうも。クロミミです。 先日、ブログのpv数の合計が1000を超えて、うおおおおおお!!ってテンション上がりつつスクショしましたw 何ヶ月かやっていて1000超えるなんて、超ショボいのは重々承知ですが、それでもやっぱりテンションあがっちゃいますねぇ。む…

小説のようだという褒め言葉が嫌いだ。

よく漫画のレビューで、「まるで小説のようだ」という賞賛のレビューを目にする。 言っている人に罪はない。だが、何故か毎度無性に腹が立ってしまう。 何故だろう。 それはきっと言葉選びの安易さを感じてしまうからだ。 わたしは 小説のようだ=緻密で深い…

家族を好きと言えるか。

以前友人と話していて、こんな話題になったことがある。 「家族って好き?」 この問いに対して友人は好きだときっぱり答えた。その迷いのなさが羨ましい。わたしはこうなりたかったのかも。とその答えを聞いた瞬間思ったものだ。 とはいえ誤解しないで欲しい…

過去は愛せない。

今回の記事を読むと、こいつやばい隠キャやん…てなるかもしれない。 けれど自己認識としてわたしが隠キャなのかどうかは10年以上考えてきたが判然としない。まじでわからん。 判断は読んだ人に任せたいと思う。 わたしには 「あのころはよかった」「あの頃に…

ノンフィクションはフィクション。

あれは今から一年ほど前のこと。 私はまだ大学4年でした。今回はその頃に研究室で卒論をいじりながら教授と話していたフィクションとノンフィクションの話についてちょっと話したいと思います。 先に私の結論を言っておくと、ノンフィクションはフィクション…