KUROMIMIには本が足りない。

KUROMIMIには本が足りない。

活字がないとダメ系ヲタク。小説・音楽・詩・ときどき映画。自作の小説も書いてます。

小説

小説・「海のなか」(27)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 第八章 「夢中と現実」 瞼が上がると、「ああ、これは夢だな」という冷めた自覚が生まれた。飽きるほど繰り返した夢だった。 夢の中で、わたしの胸は締め付けられるように苦しい。目の前には残酷なほど美しいブルー…

小説・『海のなか』(26)

前話はこちら kuromimi.hatenablog.com *** 今宵も13年前のあの日のことを語らなければならない。忘れないために。そして、叶えるために。 13年前、あなたはあの子を抱えてここに降り立った。あの時の光景は今でも色鮮やかだ。時を切り取り保存する術があ…

小説・「海のなか」(25)

前話はこちら。 *** kuromimi.hatenablog.com 付き合い始めたからといって、ほとんど変化はなかった。変わったことといえば、必ず待ち合わせて帰るようになったこと。それから時々手を繋ぐようになったこと。それだけだ。付き合っていると見せかけるため…

小説・「海のなか」(24)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** もう秋になり始めた頃のことだった。秋といってもまだまだ残暑は厳しい。言い訳のように頭上では鱗雲が透き通り、もう秋だと主張していた。 放課後を俺はまた愛花と過ごしていた。この頃は帰りが一緒になると…

小説・「海のなか」(23)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 例の一件から、愛花は何かと俺に話しかけてくるようになった。俺はといえば、美しい猫が俺にだけ特別なついたかのような、幼い優越感を感じて日々を過ごしていた。実際、あの日から愛花の鋼鉄の扉はほんの少…

大人になったからこそ、描けるもの。

連載小説・「海のなか」について。 どうも。 クロミミです。 最近やっとこさ最新話を更新いたしました、連載小説「海のなか」。今回はこちらの作品を制作するに至るまでの話を少しだけしたいと思います。お付き合いください。 話を始める前に、まだ読んだこ…

小説・「海のなか」(22)

前話はこちら kuromimi.hatenablog.com 第七章 「追憶」 愛花と出会った時から、きっともう手遅れだった気がする。 今から思えばあれが、一目惚れというやつだったのかもしれない。もう昔すぎてよくは覚えてない。けれど、いくつかの場面が断片的に焼き付い…

掌編小説・『死の明日』

液晶が青白く発光し、目を灼いた。 もう夜が深いーーー。 眩さにそう悟った。部屋の片隅からはラジオの微かな音が聞こえていた。音量を絞っているので、内容は聞き取れない。それで構わなかった。耳鳴りがしないのであれば。いつもは気にもとめない沈黙が、…

小説・『海のなか』まとめ4

どうも。クロミミです。 今回は連載小説「海のなか」の(18)から(21)をざっくりとまとめていきます。お付き合いください。 いやはや。いつぞやこれからは更新頻度あげますとかのたまったアホはどこでしょう。ここです。 ほんまに有言実行のかけらもねえク…

小説・海のなか(21)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 座っているのにそれより深く、落ちて行くような感覚だった。わたしを支えるものが消えてしまった。 図書室はいつも静かだ。わたしの知る人は、誰も来ない。だからここにいる。いつだってそうだった。わたしの…

小説・海のなか(20)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 図書館の入り口近くはすぐカウンターになっていて、その真ん中にひっそりと男性の司書さんが腰掛けていた。頭には白髪が入り混じり、頬も心なしか痩けている。神経質そうな生真面目そうな面持ちが印象に残っ…

小説・海のなか(19)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** なぜ、あんなことを言ってしまったのだろう。 自分の言葉を反芻するたびに嫌気が差した。 『夕凪、あたしが探してこようか?』 自分でやったことのはずなのに。あんなことをしてしまった自分がわからない。あ…

小説・海のなか(18)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 教室を出るとともに、また俺は囚われてしまった。 あの問題。未来という問題。 考えたくないと思えば思うほど逃れられなくなる。泥濘に足を取られ、はまり込んでゆく。もう誰のせいにもできない。逃げていた…

小説「海のなか」まとめ3

どうも。クロミミです。 さてこのまとめ記事もとうとう三回目。 先日17回目の更新をいたしました連載小説「海のなか」。読んでる人がいるのないないのかもよくわからんが、いると信じて小説の内容を今回もざっとまとめてみたいと思います。 てか、更新のたび…

小説・海のなか(17)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com ※※※ こういうことは苦手だ。俺は再確認する様に噛み締めた。我ながら、とことん裏方気質というか。こういうことはきっと佐々木なんかに向いているに違いない。けれど、悔いてももう遅い。断りきれなかった俺が悪い。…

海のなか(16)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com ※※※ 「だめ、サヤ。まだ目は伏せてて!マスカラ失敗する」 愛花がピシャリと言った。我ながら私も往生際が悪い。ここに座ってからもう、15分は経っている。愛花はなおも腰をかがめてマスカラを塗り重ねていた。メガ…

小説・海のなか(15)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com もう十月だと言うのに、体育館には熱気が充満していた。息苦しさにもがくように汗を拭う。壇上では生徒会長の佐々木が挨拶をしていた。ようやく今日がはじまる。準備作業の大変さを思うとそこから解放されることも相…

小説・海のなか(14)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 第六章 「萌芽」 『10月3日 木曜日 今夜はなんだか落ち着かなくて、彼に会いに家を抜け出した。このところは、毎晩会いに行っている。』 夜空を引っ掻いたような頼りない三日月が浮かんでいた。今にも消えそうな感じ…

小説・海のなか(13)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 「で?なんかあったわけ。じゃなきゃここにおれを呼んだりしねぇだろ」 一馬は海風に目を細めながら言った。その横顔を心底にくいと思う。ただ自分に会いたくなったから、とは考えないんだろうか。 もう、あたしは理…

小説・海のなか まとめ2

どうも。 クロミミです。 亀の歩行のごとき更新頻度の本小説「海のなか」を毎度ご閲覧いただき誠にありがとうございます。 最近、自分でも思いもしなかったキャラ一人一人の一面が見えてきて楽しい今日この頃。私の作る登場人物は大体クズです。クズ好きなも…

小説・海のなか(12)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com ※※※ 目を細めて黒く染まった海を見つめていると、夜風が渡る気配がした。夜があたしを呼んでいる。水平線の向こうでは、夕日の名残が溶けて無くなろうとしていた。夜と昼のあわい。空は夜にもなりきれず星を煌めかせ…

小説・海のなか(11)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 外に踏み出すと、すでに薄暮が降りていた。あれが最後の夕日だったらしい。と、殊更に赤く染まっていた夕凪の頬色が頭を過ぎる。違和感を覚えて掌を上に向けてみると、僅かに濡れる。霧のような雨が音もなく…

小説・海のなか(10)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 問いが口を離れてから、随分と長い空白が訪れたように感じた。それは問いかけ自体が無に帰っていく様な時間だった。奇妙だ。この沈黙は重くもないし、ましてや心地よくもない。だから私もなんだかまた話し始める気に…

小説・海のなか(9)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com kuromimi.hatenablog.com *** 到着してしばらく経っても、まだ小瀬家のインターホンに手を触れることを躊躇っていた。夕方とはいえ、まだ秋になりきれない日差しは首筋をジリジリと焼き始めている。何処かからか…

小説・海のなか(8)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 第五章 歪 その日のLHRでは、文化祭当日の役割分担を決めていた。私のクラスは喫茶店をやる予定だ。当日は調理班と給仕班にわかれてそれぞれにシフトを組むのだ。誰が決めたのか、女子生徒はフリルのついた可愛らし…

小説・海のなか まとめ1

どうも。 クロミミです。 今回は、先日また最新話を公開しました自作連載小説「海のなか」のまとめなどを少々していきたいと思います。よろしければお付き合いください。 いつも読んでくださっている方々、ありがとうございます。スターがつくたびウキウキし…

小説・海のなか(7)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 第4章 ダイアローグ 「それにしても、随分とありふれた娘を選んだものだ」 妖艶な女は興醒めたようにぽつりとこぼした。低く澄んだ声が虚空に広がっていった。私は女の横顔に目をやりつつその美しさにぞっとした。秀…

小説・海のなか(6)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com ※※※ 駅前の寂れた商店街をまっすぐに抜け、小さなトンネルを潜ると坂の上に市立図書館が現れる。濃い樹木の緑に石壁の白が夏の光に照らされて映えている。坂の下から図書館を見上げるのが好きだった。ふとした瞬間に…

小説のようだという褒め言葉が嫌いだ。

よく漫画のレビューで、「まるで小説のようだ」という賞賛のレビューを目にする。 言っている人に罪はない。だが、何故か毎度無性に腹が立ってしまう。 何故だろう。 それはきっと言葉選びの安易さを感じてしまうからだ。 わたしは 小説のようだ=緻密で深い…

小説・海のなか(5)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 閑散とした駅を後にして、気がつくとわたしは歩き出していた。その感覚は自ら歩いているというより、誰かに導かれて、という感じだった。考えなくても勝手に身体が動いていく。未知の感覚に全神経が集中して…