KUROMIMIには本が足りない。

KUROMIMIには本が足りない。

活字がないとダメ系ヲタク。小説・音楽・詩・ときどき映画。自作の小説も書いてます。

小説

小説・海のなか(5)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 小説・海のなか(5) *** 閑散とした駅を後にして、気がつくとわたしは歩き出していた。その感覚は自ら歩いているというより、誰かに導かれて、という感じだった。考えなくても勝手に身体が動いていく。未知の感…

小説・海のなか(4)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 第三章 盲目的な幸せ いつもそうであるように、台風はあっという間に通り過ぎて、週末は雲ひとつない真っ青な晴れ模様となった。目の眩むような空の青さを見続けていると、何か途方もなく大きな怪物の口を前に立ち尽…

小説・海のなか(3)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 陵からメールがあったのは、新学期が始まって数日が経った日の夜だった。それは陵からの初めてのメールだった。海に行く前に陵とはメールアドレスを交換していたけれど、メールのやりとり自体はしたことが無…

小説を書くことは浄化作業。

どうも。クロミミです。 今回は私にとっての小説を書くことと、なぜ最近小説が書けていないかについて言い訳したいと思います。暇なら付き合ってください。 最近は本当に少しずつではありますが閲覧してくださる方が増えてきて嬉しいです。 今までこういう場…

小説・海のなか(2)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 第二章 嵐の日には わたしが浜辺で発見されたその日から予報外れに天気が崩れ、退院し学校に行く頃には嵐が街を襲った。陸に帰ってきてからずっと、とめどない雨音がBGMのように耳元で囁いている。 雨は好きだった。…

小説・海のなか(1)

登場人物名にミスを発見したため、再投稿させていただきます。 第零話 プロローグ あれからもう随分と永いあいだここにいるような気がしている。 いまが一体いつなのか、もうわからない。 それほど時間が経ったのだ。あの時から。すべてを曖昧にさせるほどの…

小説・或る夢

夢の中で彩夏は父を殺した。 いや。あれは自殺だった。そのはずだ。 汗に湿ったシーツはまとわりつくように思考を束縛する。まだあの夢から醒めきっていないためかもしれない。頭の中では今しがた見た夢が断片的に浮かび上がっては消えを繰り返していた。気…

小説・夜を待つ少女

二一時を過ぎた頃、わたしの街は眠りにつこうとする。昼間は街で一番のにぎわいを見せるこの交差点にさえ沈黙が訪れて夜が深くなる。そのなかで、こわれたように点滅し続ける黄色い信号のひかりをぼんやりと眺めているのがわたしは好きだった。 通りにはほと…

小説 (仮題)反対の笑み⑴

その男は、少し違和感のある微笑でこちらを見つめ返していた。「違和感」というのは何も、目の前の男の笑みがぎこちなかったという意味ではないーーー。むしろ、穏やかに何の問題もなく男は笑っていた。違和感を覚えたのは、違っていたからだ。つまり、自分…

小説・異域にて。

祖父が死んだ、と聞いたのはずいぶん夜遅くのことだった。 もうすぐやってくる「昨日」と「今日」の狭間に滑り込むようにしてその報せは届いた。内容の意外さにわたしの心は束の間空虚になった。 死を告げた母の目はこぼれ落ちそうに震えている。充血した瞳…