KUROMIMIには本が足りない。

KUROMIMIには本が足りない。

活字がないとダメ系ヲタク。小説・音楽・詩・ときどき映画。自作の小説も書いてます。

第三章 盲目的な幸せ

小説・海のなか(6)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com ※※※ 駅前の寂れた商店街をまっすぐに抜け、小さなトンネルを潜ると坂の上に市立図書館が現れる。濃い樹木の緑に石壁の白が夏の光に照らされて映えている。坂の下から図書館を見上げるのが好きだった。ふとした瞬間に…

小説・海のなか(5)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 閑散とした駅を後にして、気がつくとわたしは歩き出していた。その感覚は自ら歩いているというより、誰かに導かれて、という感じだった。考えなくても勝手に身体が動いていく。未知の感覚に全神経が集中して…

小説・海のなか(4)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 第三章 盲目的な幸せ いつもそうであるように、台風はあっという間に通り過ぎて、週末は雲ひとつない真っ青な晴れ模様となった。目の眩むような空の青さを見続けていると、何か途方もなく大きな怪物の口を前に立ち尽…