KUROMIMIには本が足りない。

KUROMIMIには本が足りない。

活字がないとダメ系ヲタク。小説・音楽・詩・ときどき映画。自作の小説も書いてます。

物語の構造に注目して読みたまえ。

どうも。クロミミです。

 

今回ご紹介するのはこちら。

 


RDG(レッドデータガール)

荻原規子

銀のさじ文庫刊行

 

 

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ちなみに、こちらの作品はアニメ化もされています。

RDGは『十二国記』とは異なり主人公・泉水子を中心に展開する和風ローファンタジー作品です。

 

 

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解説


ハイファンタジー→全くの異世界を舞台にしたファンタジー

ローファンタジー→我々の暮らす世界を舞台として、超常的な出来事が起こるようなファンタジー

 

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あらすじはこんな感じ。


歴史ある神社の子、泉水子(いずみこ)は引っ込み思案で、いつも人の後ろで俯いているような少女だった。中学三年生になった今でもそれは変わらない。


誰かより優れているところなど、何一つないーー。

きっと泉水子自身もそして周りも、泉水子に関してそんな評価を下すだろう。

 

しかし、ある日彼女の世界は大きく変容していくことになる。泉水子が前髪を切ったその日から…。


それは不吉さを孕んで、泉水子を苛むことになるのだった…。


変化は不思議な人々との再会をも呼び寄せた。

相楽(さがら)親子との出会い。事あるごとに泉水子を詰る昔馴染み、相楽深行(さがらみゆき)の存在。だが、それは後に起こる大きな出来事の前触れに過ぎなかった。


水子は…彼女は本当に、「普通」なのか?

彼女は何を知らないのか?

彼女は一体「何者」に「なれば」いいのか?

 

今、泉水子の謎に満ちた日常が幕を開ける。

 

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こちらの作品を読むときに注意して欲しいのは、『十二国記』や『獣の奏者』のような重厚な構成のファンタジーを期待した読むと、がっかりすることになる、ということです。


わたしも最初はそう思っていました。大した構成じゃないなー。ものたりないなって。


しかし、同時に違和感もあったのです。あの児童文学の名作、「空色勾玉」シリーズを描いた作者が、そんなことを許すだろうか?と。

 

そして、気がついたのです。

 

そもそも自分の読み方が間違っていたということに。

 

この作品はファンタジーであると同時にいわゆる「セカイ系」であることを念頭に置いて読まなければならない。


ネット上でのRDGの評価が賛否に二分されているのも、この作品の特性ゆえではないか、と考えています。


いわゆるファンタジーの王道を期待してRDGを読む人はこの作品を酷評することになる。


セカイ系の有名作品としては、エヴァハルヒが挙げられます。中心人物の心情の変化を起点にして、物語世界全体が変化するという構造を持つ物語。これがいわゆる「セカイ系」であるとわたしは理解しています。

 

そう。RDGも、セカイ系なのです。

中心人物=泉水子の心情の変化が物語世界の変化を引き起こしている。


このような構造を持つこの作品は、「獣の奏者」のような、大きな構造を持つファンタジーとはなり得ません。本質から違うのです。

 

水子の心情が鍵となるため、全編を通して泉水子の内的な変化が緻密に、丁寧に描写されていくことになります。そして、この繊細な心情描写こそ、RDGの最大の魅力なのです。


このような物語のあり方は、ファンタジーというより、どちらかといえば純文学的であると言えるのではないでしょうか。


この視点で捉えていくと、RDGはとても不思議な作品であることがわかると思います。


出来事ではなく、個人の内面の変化を緻密に描くことに主眼を置く、文学的性質を持ちながら、しかし味付けはしっかりとファンタジー


だから、この作品を読むときに読者に求められる姿勢はたった一つ!キャラを愛で、その喜怒哀楽や思考を共有することです。

 

これさえできればRDGは楽しめる!


しかし、普通のファンタジーは政治面や構造、世界観を楽しむものではないでしょうか?

では、なぜこのような楽しみ方の違いが生まれるのか。


通常のファンタジー、とくにハイファンタジーはどちらかというと大きな構造を持ちやすいため、(一から世界を構築するから、どうしてもその世界に関する記述が多くなる。また、その場面設定でしか起こりえない心の動きや社会状況などを通して普遍的なものや風刺を描く事がハイファンタジーの一つの目標となりがち)社会などを巻き込んだ「出来事」で物語が動いていく傾向にあります。


ところが、前述したように当作はそうでない。

だからこそ、『RDG』はファンタジー特異点と言えるのです。


もちろん、この作品の魅力は緻密な心情描写だけではありません。魅力的なキャラクターのやりとりにもきっと夢中になってしまうはず。

 

この作品の少年少女の魅力は、極めて特異な状況に置かれているにもかかわらず、その心情の動きは紛れもなく、等身大の青少年のものである点。

 

個人的には、ヒーロー役の相楽深行(さがら みゆき)が自分の特異な立場に葛藤する様子がとてもとっても、いいなって思います。はい。萌える!!!

←死語ww


キャラがしっかり立っているので、普段本を読まないよって人にも是非挑戦してほしい作品です。いっそ構造なんぞ気にせず、思いっきりキャラに萌えつつ、キャラ読みしてほしい!


是非、ご一読を。


アニメ化も漫画化もされてますので、そちらから入るのもいいと思います。文庫化もされてますよ!

 

特に、陰陽道や九字や陰陽五行、山伏、天狗(つまり民俗学系)に興味がある人には、めちゃくちゃおすすめです!

 

この作品の挿絵が好きすぎて、高校時代に模写していたのはいい思い出。今回、簡単にですが模写してみました。下手くそですが失礼します。色鉛筆がなかったので、モノクロです。

 

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この絶妙の表情メッッッチャすこ…。再現できん。おワタ。シャーペンじゃなくて、鉛筆で書けばよかったなぁ。

久々に書くと、巫女服むずい…。

日本の服ってこうして書いてみると、直線的なラインなんだな〜って思います。その方が日本人の肉感の少ない体型に映えるのでしょうね。服って面白いなぁ。

 

とりま、このほっぺの尊さと、布のおもみとしなやかさを、どうやったら描けるようになるのか、皆目わからないクロミミでした。

 

それではまた。

好き勝手に語って、スミマセンでした。

 

 

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