KUROMIMIには本が足りない。

KUROMIMIには本が足りない。

活字がないとダメ系ヲタク。小説・音楽・詩・ときどき映画。自作の小説も書いてます。

クズっていいよね。最高だよね。


クロミミ的ブック  海外文学編

 


それでは、語っていきましょう。前以て言っておこうと思うのですが、前回よりも固めのものが多くなっていると思います。しかし、おもしろいものもいっぱいありますので、最後までお付き合いいただけると幸いです。どれも有名作ばかりです。

 


以下、

 


作家名

作品名

感想など。

 

 

 

 


レイ・ブラッドベリ

 


今回ご紹介するのは、いずれもハヤカワSF文庫から出ている新訳です。

この人は、アメリカのSF作家。高校一年の時に出会いました。このあと紹介するものの他にも色々書いていますが、わたしは特に「華氏451度」という作品が大好き。焚書について書いた名作。映画化も大昔にやっていますが、味があってすきです。

 


黒いカーニバル   

伊藤典夫   訳

 


この短編集はわたしが初めて読んだブラッドベリ作品でした。完璧にジャケ買い。しかしよかった!!今でもこの出会いに感謝しています。わたしが人生で初めて読んだSFでもありました。

 


※彼のSFはサイエンスフィクションとスペースフィクションどちらも含みます。

 

 

 

わたしはこの短編集の中でも特に「青い壜」という短編が大好き。あまたの男たちが青い壜を奪い合うという話。詩的で美しすぎる描写に何度も何度も読み返しました。そのあといくつもブラッドベリの短編を読みましたが、「青い壜」を超える短編はついぞなかった気がします。この短編集には他にも「黒い観覧車」や「みずうみ」などの名編もたっぷり。一読の価値ありです。

 

 

 

今回は触りだけ「青い壜」を引用したいと思います。

 

 

 

 


おそろしいような気持だった。今度こそ見つけてしまうのではないか。それが不安だった。捜索は、見つかった瞬間に終わり、人生は無意味になってしまうのだ。彼の人生に目的が生まれたのは、そんなむかしではない。金星と木星のあいだを往来する船乗りたちから、〈青い壜〉の話を聞いた十年前からなのだ。彼の内部に燃えあがった炎は、それから一度も消えたことはなかった。計画的にことを運べば、壜を見つける希望だけで、充実した生涯をおくれそうだった。あと三十年はそれで保つだろう。あまりあくせくせず、じっくりと腰をおちつけていさえすれば。

レイ・ブラッドベリ『黒いカーニバル』所収「青い壜」より一部を抜粋)

 

 

 

 

 

 

フィリップ・K・ディック

この項で扱うディック作品は全てハヤカワSFから出た新訳のものとする。

 


このひとこそ、ザ・SF。

ディックといえば、皆さんもご存知の「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」で有名。ブレードランナーという題名で映画化もされてますね。映画は二つとも見ましたが、どちらもなかなか良き映画に仕上がっている模様。わたしの大好きな斗司夫(ヲタキングの岡田斗司夫さんです)の評価も上々でした。

 


しかし、わたしはこの作品よりも他を推したい。電気羊が微妙だったというより、この作品が素晴らしすぎるのです。

 


それが、こちら。

 

 

 

高い城の男

浅倉久志  訳

 


誰が何と言おうと、至高のSF。第二次世界大戦の結末を全く逆転させ、日本、ドイツ、イタリアが勝利した後の世界を描く。しかもそこに白人黒人黄色人種の人種差別問題も絡む、という複雑さ。この難解な世界を全くリアリティーを損なうことなくディックは描き切ってしまうのです!

 


実際にありそうな差別や偏見。そこに、現実の私たちが抱える問題をも孕んで世界は構築されていきます。この圧倒的筆力と構築力には読んだものを圧倒する力がある。

 

 

 

 


他に類を見ない素晴らしい構成力をディックは持っていると思います。

 


これぞSF。死ぬまでに読みたい一冊に推します。ぜひお読みください。

 


一例として、わたしの好きな部分を抜粋します。文章の雰囲気だけでもわかればな、と思います。

 

 

 

ジョーの謎めいた渋面を見て、彼女は背筋が寒くなった。こんな男を泊めるんじゃなかったわ、と彼女は思った。もうこうなっては手遅れだ。もう追い出せないのはわかってるーー向こうが強すぎる。

何か恐ろしいことが始まりそう、と彼女は思った。彼からそれが出てくる。そして、あたしはそれに手を貸しているらしい。

 


フィリップ・K・ディック「高い城の男」より一部を引用)

 

 

 

 

 

 

トマス・ハリス

 


この人のクールな文体は大好きです。内容とぴったりマッチ。ここでいうハンニバルシリーズは全て新潮文庫から刊行されたものを指しています。

 


羊たちの沈黙

菊池 光  訳

 

 

 

ハンニバルシリーズ第1作。わたしが珍しくちゃんと読めたサスペンスですが、正直ハンニバル・レクターという探偵役のキャラクターの魅力が素晴らしすぎたが故です。恋に落ちそうなくらい狂った素晴らしい紳士。大好き。映画化もされていますが、ハンニバル役をつとめられた俳優のアンソニー・ホプキンスが大好きすぎてもう片時も目が離せない。あの人以外でレクター博士を想像できません。おじさま大好き💕うはーーーたまらん。

 


ホプキンスは他にもカズオ・イシグロが原作小説を描いている「日の名残り」という名映画(原作も良かったよ)にて超絶ステキな不器用可愛い執事様の役もやっておられます。みんなで、アンソニー・ホプキンスを愛でようぜ!!

 

 

 

ちなみに、レクター博士にきゅんきゅんしたいなら、こちらがオススメ。

 


ハンニバル上・下

高見 浩  訳

 


ハンニバルシリーズの第2作目です。

レクター博士の狂いっぷりと能力の高さに圧倒されます。

 


マジカッケェレクターカッケェ!!←語彙力w

 

 

 

ちなみに、この後もハンニバルライジングに続きますがわたしは挫折しました。絶対に理由づけして欲しくなかったレクターの狂気に理由づけがなされてしまうからです。このヤロー!トマス・ハリス!このヤロー!

 


あっ、でも番外編のレッド・ドラゴンも読んでないや・・・テヘペロ⭐︎←古い。

 


最後に、大好きな一部を引用したいと思います。

 


「たいがいの人間はチョウを愛し、ガを嫌悪する」ピルチャーが言った。「しかし、ガの方がもっとーー興味深い、人を楽しませる」

「ガは有害だわ」

「有害なのもいる、たくさんいる、しかし、ガは多種多様な生き方をしているんだ。ちょうど俺たちのように」次の階まで沈黙が続いた。「ガの一種は、実際には一種以上いるが、涙だけで生きているのがいる」ピルチャーが口を開いた。「それしか飲み食いしないんだ」

「どんな涙?誰の涙?」

「俺たちくらいの大きさの、陸棲の大きな哺乳動物の涙だ。昔のガの定義は、<あらゆる物をゆっくりと、静かに、食べ、消耗し、あるいは破壊するもの全て>だった。ガは、破壊を意味する動詞でもあったのだ・・・きみが始終やっているのは、こういう事なのかーーーーバッファロゥ・ビルを追う?」

「できる限りやってるわ」

 


トマス・ハリス羊たちの沈黙」より一部を引用)

 

 

 

 

 

 

ウィリアム・アイリッシュ

 


幻の女   

 


ここでは、ハヤカワミステリ文庫の黒原敏行の訳です。

全く無罪の男が、自分の妻を殺した無実の罪を着せらる。その罪をなんとか死刑執行までに晴らさねばならない。男は無事死刑を免れるのか?

 


読む人を酔わせる甘い名文。この冒頭部がとてつもなく有名。今回は、ハヤカワミステリの新訳から引いています。ご了承をば。

 

 

 

ーーー夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった。

ウィリアム・アイリッシュ「幻の女」より冒頭部を引用)

 


この文章は前回ご紹介した、穂村弘も名文としてあげています。大好き。ただし、ウィリアム・アイリッシュの著作でこの「幻の女」以外を探すのはとても難しい。ほとんどの本が新たに刷られていないからです。インターネットでも高額な古本以外出てこない。とりあえずわたしは東京に行く際は神田の古書店街でウィリアム・アイリッシュを探すことに決めました。

 


めちゃくちゃ面白いので、ぜひ読んでみてください。最近読んだ本の中では3本の指に入ります。

 

 

 

 

 

 

ドストエフスキー

 


ロシア文学の代名詞。この人のはどれも光文社の古典新訳文庫で読んでいます。亀山郁夫の訳で。この人の訳はかなり思い切っていて面白い。原典主義の人が読んだら怒りそうだけどwでもいいんだ。大好きだから。

わたしは今まで、4作ほど読んできましたが、この人の作品大好きです❤️本当に文学のくせしてエンタメしてんなって思う。なぜなら、キャラの個性が濃ゆすぎだから。

 


360度どこをみても、女にだらしないクズとか、宗教に恋しちゃった狂った天使とか、人を操ることで自分を満たすクソインテリとか、女二股かけておきながら、そのどちらからも借金して返さない貴族男とか。ありえないクズに惚れるめちゃくちゃ魅力的な高慢美人とか。娼婦のようにコケティッシュな令嬢とか。どこみても、男は呑んだくれとクズとロクデナシと狂った奴しかいない。女はすごい魅力的。老若問わず。強い意志を持ったかっこいい女性が多いかも。でも男はフラねぇんだよな、あんなクズなのに。フシギー。

 


しかもそいつらがしっちゃかめっちゃかに己の哲学や論理を振りかざしながら自分勝手に動く。もうめちゃくちゃ。正直、話の筋がどうとかわかってなくても面白い。このめちゃくちゃを外野から物知り顔で眺めるのが読者の特権なのです。野次馬の立ち位置が読者。

 

 

 

共感しようだなどと思う方が間違っている。だってみんな狂ってるんだもーーん。

 


ふふ・・・愚か者めが。

とニタニタしながら読もうぜ。

 


ちなみにわたしはドストエフスキーの中では

「悪霊」か「カラマーゾフの兄弟」が大好き😘

今度、「白痴」も読みたいなあ。

 


キャラクターとしては、「カラマーゾフの兄弟」のミーチャか、「悪霊」のヴェルホヴェンスキー(息子)が好きです。ヴェルホヴェンスキー(父親)のだめっぷりも超ツボだけど。

 

 

 

是非一度お試しあれ。

 

 

 

 


スコット・フィッツジェラルド

 

 

 

グレート・ギャッツビー

村上春樹  訳   (村上春樹 翻訳ライブラリー)

 


この作品は、二回映画化されています。わたしは古い方の映画化が好み。途中でてくる車の再現具合とか、役者の感じが断然好みだから。華やかさの中に漂う退廃がより再現されている感じがします。

 


ギャッツビーというのは人名。ギャッツビーは大金持ちで、毎日のように盛大なパーティーを屋敷で開いている。というのがこの物語の始まり。なぜ、ギャッツビーはそんなものを開くのか?

 


限りない煌びやかさの中に、孤独の影が落ちる。そんな物語。この人の友人の視点で、全てが語られる。最後まで読めば、なぜこの小説が友人視点で語られねばならなかったのかがよく分かる。

 

 

 

高校2年の頃、これを読んで号泣した思い出があります。ネタバレになりすぎるので、詳しくは伏せますが。

 


ちなみに、ハルキはこの作家が大好きです。だから訳しちゃったらしい。

 


一度は読んでみてほしい名作。

 

 

 

 

 

 

ゲーテ

 


ファウスト  池内紀

 


一度は読んでほしい戯曲。悪魔と契約して全てを手に入れようとする男・ファウストの話。

 


これを読んでいると考えさせられます。誰にでも手に入らないものがある、できないことがあるから不幸せだと思うことがあるのでは?しかし、実際はそうじゃない。充足しない状態知っているからこそ、自分の充足を私たちは認めることができる。知らなければ、いつまでも充足せず不幸なまま。だから、充足しようとさらなる欲望を満たそうと躍起になる。と、丁度こんな風に、欲望の奴隷になってしまうのではないでしょうか。わたしはファウストをそういう人間だと思った覚えがあります。←言ってて訳わかんなくなってきたな。

 

 

 

戯曲って、結局は劇なので口に出して読むことが考えられているんですね。なので、めちゃくちゃ言葉のリズムがいい。詩みたいなものです。なので、多少意味わかんなくても読めてしまいます。わたしは戯曲だと他にもハムレットなども読んだとこがありますが、それもそう。いまは、ロミオとジュリエットを読んでいます。次は、マクベスを読みたいなあ。

 

 

 

よかったら、読んでみてください。

 

 

 

 


〈番外編〉

 


ビアス     著

 


悪魔の辞典

西川正身  編訳   岩波文庫

 


いろんなことを皮肉たっぷりに面白く論評した、まさに悪魔が書いた辞典。

 


たとえば。次のような言葉を、悪魔の辞典ではこう解釈。

 


いんちき

政治屋の言明、医者の学問、評論家の知識、俗受けを狙う説教師の信仰、一言で言えば、この世の中。

 

 

 

食人種

素朴な好みを失わず、豚肉以前の時代に特有な天然の食べ物を固守し続けている旧派に属する美食家。

 

 

 

過ち

当方の犯す違反の一つであって、他人様の犯す違反の一つとは区別されている。というのも、後者は犯罪であるからだ。

 


安心

 


隣人が不安を覚えているさまを眺めることから生ずる心の状態。

 


ビアス悪魔の辞典」より引用)

 


めちゃくちゃおもろい。読んでみてください。

ちなみに、食人種のところで、あ、これレクター博士のことやん。て思いました。美食家とは。ビアスったら、わかってるぅ!!←

 

 

 

 


それでは、この辺で終わりにしたいと思います。すみません。ずいぶん長くなってしまいました。皆様も、自分の好きな本などございましたら、是非コメント下さいませ。

 


あと、海外文学を読まれる際はどなたの訳かもとってもとっても重要なので、気をつけてください。初心者🔰の方は、岩波文庫は避けるのが妥当です。わたしは割と好きですが。こないだ、ミルトンの失楽園を立ち読みしたらよかったので。

 

 

それでは、今回もありがとうございました。次回もよろしくお願いします。