KUROMIMIには本が足りない。

KUROMIMIには本が足りない。

活字がないとダメ系ヲタク。小説・音楽・詩・ときどき映画。自作の小説も書いてます。

詩・「春の長夜」

水の匂いがした

 


夜の匂いだ

 


だれかがひんやり 運んできた

生温くない 春

 


花冷えはとうに過ぎて

花の色も青くかわる

 


街灯の灯は さめざめと降り

夜のしじまを 煌々と白くする

 

 

 

わたしの鈍い歩みだけが刻まれた 

 


曇天の夜

 


こんなにも冴えない夜なのに

 


夜の黒は美しい

 


漆黒よりも透けて 墨よりも深い

 

 

 

変わらないものがあるならば それは夜

 


美しい黒を 

 


抱いて眠るしあわせ