2020-04-28 詩・「春の長夜」 詩 水の匂いがした 夜の匂いだ だれかがひんやり 運んできた 生温くない 春 花冷えはとうに過ぎて 花の色も青くかわる 街灯の灯は さめざめと降り 夜のしじまを 煌々と白くする わたしの鈍い歩みだけが刻まれた 曇天の夜 こんなにも冴えない夜なのに 夜の黒は美しい 漆黒よりも透けて 墨よりも深い 変わらないものがあるならば それは夜 美しい黒を 抱いて眠るしあわせ