KUROMIMIには本が足りない。

KUROMIMIには本が足りない。

活字がないとダメ系ヲタク。小説・音楽・詩・ときどき映画。自作の小説も書いてます。

誰にも奪えないもの。

f:id:KUROMIMI:20210519171100j:image

わたしがアジカンを好きになったのはいつだったろうか。それはきっと高校生の時。高校1年の夏だった気がする。

 


ある日唐突に甦ったのだ。

 


安っぽい羽根を背負って叫ぶ男たちの姿が。

 


それは紛れもなく、あの「アフターダーク」のPVの一部だったのだけれど。わたしはそれを小学生の時分、ブリーチのアニメの合間に見たのだった。

 


なぜか焼きついて離れなかったそれを縁にたどると行き着いたのがアジカンだった。

 


あとから、好きだったアニメ映画「鉄コン筋クリート」の主題歌もアジカンだったことを知った。

 


けれど、このどちらもわたしの一番好きな曲ではない。

 


わたしが一番好きなのは、

オールドスクール

という曲。

フィードバックファイル2」というアルバムに収録されている。土臭く、切れ味の良いロック。この曲を聞くときはいつも口の中に渇いた味がする。

 フィードバックファイルは1も2も名曲揃いなのだけれど、この曲は一際わたしを狂わせた。

 


一時期はこの曲しか聴いていなかったくらいだ。目覚めた時、着替える時、行ってきますを言いながら、学校に着いた時、お昼休み、帰る時、勉強中、そして眠る前。

 


とにかく呼吸と同じくらい聞いていた気がする。

 


あの感覚は幼い頃の読書の仕方に似ていた。何度も何度も何度も何度も自分の中に擦り込んでは、繰り返し取り出し味わうような。

 


昔のわたしは寝際に読んでいる本の内容を思い出すのが好きだった。そうすることで本を読んでいないときにも読書の楽しみが長持ちするから。

 


……いや。嘘はやめよう。今もやっている。そしてニヤニヤしてる。気持ち悪い。

 


 昨夜は、久しぶりにアジカンを聴いて過ごした。

ああ。やっぱりアジカンはいいなぁ。と思っていると目のピントが合わない。疲れているようだ。

 


さあ、寝よう。と寝床に潜り込むと途端に眠気の波が襲ってきた。しかし、何か違和感がある。

そしてふと、気が付いた。

 


枕元ではいまだ、アジカンの「ケモノノケモノ」が結構な音量で流れていたのだ。

 


なぜ今のいままで気がつかなかったのだろう。

 


どうやらアジカンは私の交感神経を刺激しないらしい。

 


それほどに、私の一部なのだ。

 


もっとたくさんのものが私のなかに溶けるといい。境目がわからなくなるくらい深いところまで。

 


きっとそれは 誰にも奪えない私だけの財産だ。

 


さあ。次は何を味わおう。

 


あの素晴らしい味を 私はもう忘れられない。

 


ずっとずっと巡り続ける円環のように。