KUROMIMIには本が足りない。

KUROMIMIには本が足りない。

活字がないとダメ系ヲタク。小説・音楽・詩・ときどき映画。自作の小説も書いてます。

2025-01-01から1年間の記事一覧

小説「アキラの呪い」(25)【完】

最終話 怪物と人間の論理 語り終えた彼女はむしろ退屈そうに見えた。ここまで衝撃を与えておきながら。やはり俺の姉はろくでもない女だ。当たり前のことを再度噛み締めながら、俺だけが感情的になっているようで急に馬鹿馬鹿しくなった。彼女は一度も激する…

小説「アキラの呪い」(24)

私は哀れな義弟を見つめた。孤独な義姉に付き合い、いつか自分自身をも手放しそうな青年を。この手をいつか手放す時が来るだろうと予感していた。ずっと怖かった。自分の辛辣さが無神経さが傲慢さが臆病さが彼を壊してはしまわないかと。昔から歩は不思議な…

小説「アキラの呪い」(23)

いつのまにか私は高校生になった。この頃にはもう母と私は衝突することはなかった。いや、衝突すらできなくなった。 もちろんそれまでだって表立って喧嘩していたわけではない。それでもわずかな摩擦やすれ違いは繰り返しあった。家族としてやっていくなら当…

小説・「アキラの呪い」(22)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** それまで私の中に残るものはなかった。ただ通り過ぎていくだけ。周りのもの全部がそう。血の繋がった母親でさえそうだったんだから、当たり前よね。ーーー今気づいたんだけど…。だから顔や名前を覚えられない…