KUROMIMIには本が足りない。

KUROMIMIには本が足りない。

活字がないとダメ系ヲタク。小説・音楽・詩・ときどき映画。自作の小説も書いてます。

2024-01-01から1年間の記事一覧

小説・アキラの呪い(21)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 住人が増えてからも、私の毎日は大して変わらないだろうと思ってた。あんたと父さんは驚くほど家族として馴染んだじゃない?疑問を持つのもバカらしくなるくらいにね。私はそれを見て安心してたの。さっきも…

掌編小説 「赤い唇の女」

ーーーこれは雨の呪いのようなものだ。 ガラス窓の中の女が微笑った。わたしは決して笑っていないのに。手を頬に触れるが、そこには僅か強張りすら感じなかった。 初めに気がついたのは水たまりだった。幼い日のある雨の午後。暇を持て余して水面を覗き込む…

自作の小説「アキラの呪い」のキャラを描く。

↓主役二人です。もしも表紙があったら…と妄想して描きました。結構ホラーテイストな仕上がり。構図は二人の関係性を意識して決めました。 主人公の義弟、歩とその友人拓人の大学での様子。↓ ↓主人公の晶が自殺未遂した時に、(作中冒頭で彼女は自殺未遂しま…

自作小説のキャラクターを描く。

「アキラの呪い」主人公の水無瀬晶↓ 「海のなか」主人公の小瀬夕凪↓ 絵を描くのあまり得意とは言えないけど、こうやって自分のキャラ描くのは妄想が捗って楽しいな…! 他のキャラも描いてるのでまた投稿します。

短編小説・まっくらな男

喉がゆっくりと締まるような気怠さに身体が支配されていた。今日に限ったことではない。いつだってそうだった。いくら眠ろうと、いくら食べようと、いくら休もうと、いつまでも居座る呪いのような倦怠感。果てのない繰り返しへの飽きが原因だと気がついたの…

小説・「アキラの呪い」(20)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 退院が近づいてくると、姉は言った。 「3日後に部屋へ来るように」と。それはまるで独り言のようだった。告げる時、姉は窓の外を眺めたままで一度もこちらを振り向かなかった。頬のなだらかな曲線。俺はその…

小説・アキラの呪い(19)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 赤黒く固まった血に塗れた敷物をゴム手袋越しに触ると、ずっしりとして重かった。そうしてその下から出てきたのは大量のペットシーツだった。犬猫が排泄をするときに下に敷くあれだ。夥しい数のペットシーツ…

小説・アキラの呪い(18)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 目覚めると、白い蛍光灯が縦に伸びているのが見えた。消毒液の匂いが鼻をつき、今自分が何処にいるのか分かった。格子状の白いパネルを嵌め込んだ天井には見覚えがあった。以前入院した病院と同じだ。その光…

小説・アキラの呪い(17)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 第四章 彼女が望む理由 珍しく向こうから連絡を寄越したのは、帰省が終わってすぐのことだった。その内容は簡潔で「部屋の片付けをするから今週は来るな」ということらしい。今更部屋が片付いていないことを気にする…

小説「アキラの呪い」(16)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 間話2 「深夜:side晶」 深く静まり返った夜のことだった。 誰かがうめいていた。男の掠れた声が壁向こうから聞こえる。作業の手を止め、わたしは知らぬ間に歩の部屋の前へと立っていた。ドアノブを引くと、くぐもっ…

小説「アキラの呪い」(15)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 晶は結局翌日には早々と片付けを終えてしまった。後には空の部屋だけが残された。まるでそこだけ持ち主を失ったかのようだった。そうして姉はその後一日だけ滞在し、実家からアパートへと戻っていった。正直…

小説・「アキラの呪い」(14)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 両親はもうすぐ10時になろうかという頃に合わせて起きてきた。少し遅い朝だった。父が先に起きて、ついでに母を起こして連れてきたらしい。父も母も朝が弱いわけではない。やはり昨日の酒が効いたんだろう。 両親が…

小説・「アキラの呪い」(

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 朝飯は予定通り目玉焼きにウィンナーを添えた。両親の分も合わせて作ってしまう。二人とも今日まで休みで明日から仕事らしい。昨日そこそこ呑んでいたから、もしかしたらなかなか起きてこないかもしれない。…