アキラ 三章
前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 晶は結局翌日には早々と片付けを終えてしまった。後には空の部屋だけが残された。まるでそこだけ持ち主を失ったかのようだった。そうして姉はその後一日だけ滞在し、実家からアパートへと戻っていった。正直…
前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 両親はもうすぐ10時になろうかという頃に合わせて起きてきた。少し遅い朝だった。父が先に起きて、ついでに母を起こして連れてきたらしい。父も母も朝が弱いわけではない。やはり昨日の酒が効いたんだろう。 両親が…
前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 朝飯は予定通り目玉焼きにウィンナーを添えた。両親の分も合わせて作ってしまう。二人とも今日まで休みで明日から仕事らしい。昨日そこそこ呑んでいたから、もしかしたらなかなか起きてこないかもしれない。…
前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 姉が帰省した翌日。壁の向こうから聞こえる物音で目覚めた。壁を挟んだ隣部屋は姉の部屋だ。 「姉さんか…」 夢現だった意識は覚醒へ向かう。低いうめきと共に無意識で呟いていた。同じ家に姉がいることに慣れ…
前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 予告通り帰省した姉をみて、俺はほっとため息をついた。正確には、その手首を観察していた。最近彼女のリストカット跡はかなり薄くなってきている。それでもよく見れば分かってしまう程度には残っていた。今…
前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 第三章「家族」 ある晴れた月曜の朝だった。 秋晴れを見上げつつ洗濯物を干していると、母がこんなことを言い出した。 「あ、そうだ。晶だけどね、今週末帰ってくるって連絡あったわ」 「え」 振り向くと、ソファー…