ある夜
音楽を聴いて歌っていると
あの部屋の味がした。
かさかさと乾いたひとりの 贅沢な味が。
その時やっと思い知ったのだ。
『もうあの場所には戻れない』
同時に 虚しかった
きっと私はすぐに忘れてしまう
わたしはわたしの薄情さが憎かった。
けれど 薄情さを快いと感じてもいるのだ
どこまでも身軽でいたいなら
それがいちばん
今までに繰り返した
『また会いにきます』
の中身は空洞
言うたびに薄く脆い何かが
胸の奥に溜まっていくような
会いたい人は いない
会えない人は いない
あの世よりも遠い この世を感じて