KUROMIMIには本が足りない。

KUROMIMIには本が足りない。

活字がないとダメ系ヲタク。小説・音楽・詩・ときどき映画。自作の小説も書いてます。

小説・「海のなか」(23)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 例の一件から、愛花は何かと俺に話しかけてくるようになった。俺はといえば、美しい猫が俺にだけ特別なついたかのような、幼い優越感を感じて日々を過ごしていた。実際、あの日から愛花の鋼鉄の扉はほんの少…

大人になったからこそ、描けるもの。

連載小説・「海のなか」について。 どうも。 クロミミです。 最近やっとこさ最新話を更新いたしました、連載小説「海のなか」。今回はこちらの作品を制作するに至るまでの話を少しだけしたいと思います。お付き合いください。 話を始める前に、まだ読んだこ…

小説・「海のなか」(22)

前話はこちら kuromimi.hatenablog.com 第七章 「追憶」 愛花と出会った時から、きっともう手遅れだった気がする。 今から思えばあれが、一目惚れというやつだったのかもしれない。もう昔すぎてよくは覚えてない。けれど、いくつかの場面が断片的に焼き付い…

読書の意義とは。

昔から、教育現場において 「読書をしなさい」 と言われる。 読書の効用とはなんだろうか。 これはいくつか挙げることができると思う。 まずは、文章の読解力が上がる。もしくは自分の知らない知識を知ることができる。または、知らない考え方を取り込むこと…

掌編小説・『死の明日』

液晶が青白く発光し、目を灼いた。 もう夜が深いーーー。 眩さにそう悟った。部屋の片隅からはラジオの微かな音が聞こえていた。音量を絞っているので、内容は聞き取れない。それで構わなかった。耳鳴りがしないのであれば。いつもは気にもとめない沈黙が、…

わたしが自己啓発本を読まない理由4つ。

自己啓発本を読まない4つの理由。 よく、自己啓発本を読む人を見かける。 見るたびわたしは思う。 なぜ読むのだろう? と。わたしはこれまで二十五年の人生の中でほとんど所謂「自己啓発本」と呼ばれる類のものを読んだことがない。 ここで言う自己啓発本と…

いつか、描きたい線がある。

いつか描きたい線がある。 昨日、バッテリーの表紙を模写していた。 あさのあつこ/著「バッテリー」だ。 思えば、この作品がわたしの人生に初めての佐藤真紀子との出会いをもたらしてくれた。 彼女の挿画を手にしたいがために、全巻ハードカバーで揃えたほど…

わたしと相対性理論。

透き通るような声に、価値観が揺らぐ。 クロミミと相対性理論 #クロミミ的音楽#クロミミと音楽 わたしが相対性理論と初めて出会ったのは、中学生の頃。 ラジオから流れてきた「恋は百年戦争」。一度だけ聞いたそのサウンドが忘れられず、TSUTAYAに借りに行っ…

詩・六月十四日

紫陽花が色づいて 産声を上げた この季節を愛せないまま 大きくなって 私はまた 好きと言う言葉が嫌い 一雫ごとに色を増す花 なんだか ずっと怖いの 綺麗すぎるから 綺麗 は 嫌い 責められているみたいで 雨の降る日は 綺麗な季節 綺麗になれないまま大きく…

小説・『海のなか』まとめ4

どうも。クロミミです。 今回は連載小説「海のなか」の(18)から(21)をざっくりとまとめていきます。お付き合いください。 いやはや。いつぞやこれからは更新頻度あげますとかのたまったアホはどこでしょう。ここです。 ほんまに有言実行のかけらもねえク…

小説・海のなか(21)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 座っているのにそれより深く、落ちて行くような感覚だった。わたしを支えるものが消えてしまった。 図書室はいつも静かだ。わたしの知る人は、誰も来ない。だからここにいる。いつだってそうだった。わたしの…

わたしとサカナクション。

理解できないものがあるって、素敵。 #クロミミと音楽 その4 わたしとサカナクション。 わたしがサカナクションを聴き始めたのは、多分中学の終わり頃。たしか、テレビか何かで「ミュージック」を知ったことがきっかけだった。 そんな入り口から入ったせいな…

わたしとキリンジ

#クロミミ的音楽 DNAに組み込まれたサウンド。 わたしとキリンジ。 キリンジといつであったのかはもう思い出すことすら不可能だ。 ただ、母が聴いていた事だけが確かで、それがきっかけだったのだろう。 気がついたら知っていて、気がついたら歌えるようにな…

詩・私の消失

わたしが散り散りになっていく。 あんなに拘っていたもの。 あんなに縋っていたもの。 すべて 遠くなって 大切なものがどんどん欠けていく。 毎日問われる。 「今日はどれを捨てるの?」 怖いと言っても 虚しいと言っても 逃れることのできない責苦。 でも、…

もっと見たことのないものを。

もっと見たことのないものを。 わたしとゆら帝。 #クロミミ的音楽語り わたしが通称ゆら帝ーーーゆらゆら帝国と出会ったのは、何年か前に「カルテット」というドラマを見たことがきっかけだった。(カルテットの脚本家は今季の「大豆田十和子と3人の元夫」と…

誰にも奪えないもの。

わたしがアジカンを好きになったのはいつだったろうか。それはきっと高校生の時。高校1年の夏だった気がする。 ある日唐突に甦ったのだ。 安っぽい羽根を背負って叫ぶ男たちの姿が。 それは紛れもなく、あの「アフターダーク」のPVの一部だったのだけれど。…

小説・海のなか(20)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 図書館の入り口近くはすぐカウンターになっていて、その真ん中にひっそりと男性の司書さんが腰掛けていた。頭には白髪が入り混じり、頬も心なしか痩けている。神経質そうな生真面目そうな面持ちが印象に残っ…

「好き」では足りない何か。

この間、ある人に あなたは本が好きなの。 と問われた。 その時、出てくるはずの「はい」は出てこなかった。言葉が口を離れる瞬間、これは違うと気が付いてしまったから。 「好き」では決定的な何かが足りない。 わたしは結局 「そんなこと、考えたこともな…

何かを愛するということ。

新しい地に引っ越してから、もうすぐ四ヶ月が経とうとしている。転職してからは先日半年が経過した。 私が引っ越した先は言ってしまえばかなりの田舎だと思う。前住んでいた場所より県の中心地にいくには倍以上の時間を食うし、人口も全国のワーストに入るく…

小説・海のなか(19)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** なぜ、あんなことを言ってしまったのだろう。 自分の言葉を反芻するたびに嫌気が差した。 『夕凪、あたしが探してこようか?』 自分でやったことのはずなのに。あんなことをしてしまった自分がわからない。あ…

小説・海のなか(18)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com *** 教室を出るとともに、また俺は囚われてしまった。 あの問題。未来という問題。 考えたくないと思えば思うほど逃れられなくなる。泥濘に足を取られ、はまり込んでゆく。もう誰のせいにもできない。逃げていた…

小説「海のなか」まとめ3

どうも。クロミミです。 さてこのまとめ記事もとうとう三回目。 先日17回目の更新をいたしました連載小説「海のなか」。読んでる人がいるのないないのかもよくわからんが、いると信じて小説の内容を今回もざっとまとめてみたいと思います。 てか、更新のたび…

小説・海のなか(17)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com ※※※ こういうことは苦手だ。俺は再確認する様に噛み締めた。我ながら、とことん裏方気質というか。こういうことはきっと佐々木なんかに向いているに違いない。けれど、悔いてももう遅い。断りきれなかった俺が悪い。…

海のなか(16)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com ※※※ 「だめ、サヤ。まだ目は伏せてて!マスカラ失敗する」 愛花がピシャリと言った。我ながら私も往生際が悪い。ここに座ってからもう、15分は経っている。愛花はなおも腰をかがめてマスカラを塗り重ねていた。メガ…

古本屋巡りな新年。

こんにちわ。クロミミです。 新年あけましておめでとうございます。 今年も出来るだけ楽しさとやりがいに満ちた生活を送れればなーと思います。今年もいっぱい小説書いて、いっぱい本読みたいな。 今年の年末年始はジョジョと共にありました。 もちろん「岸…

小説・海のなか(15)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com もう十月だと言うのに、体育館には熱気が充満していた。息苦しさにもがくように汗を拭う。壇上では生徒会長の佐々木が挨拶をしていた。ようやく今日がはじまる。準備作業の大変さを思うとそこから解放されることも相…

小説・海のなか(14)

前話はこちら。 kuromimi.hatenablog.com 第六章 「萌芽」 『10月3日 木曜日 今夜はなんだか落ち着かなくて、彼に会いに家を抜け出した。このところは、毎晩会いに行っている。』 夜空を引っ掻いたような頼りない三日月が浮かんでいた。今にも消えそうな感じ…

ただ自分らしくありたいだけなのに。

私はキラキラしたものが好きだ。 昔からそうだった。 キラキラしたアクセサリーを見ていると日々の悩みがどうでもよくなる。幸せになれるのだ。コスメもメイクも好きだし、おしゃれすること全般が大好きだ。愛していると言ってもいい。 こういう私の嗜好を他…

詩・地獄を生きる

地獄を生きようと思う それを選ぶ権利がある 自由を生きようと思う 自由という地獄を この地獄をわたしだけはどこまでも知ろう まだこの先があると分かっている ここには底がない 私の欲望の深さと同じに 味わったことのない幸と不幸 それだけを飽くことなく…

詩・さみしいひとびと

ひとはみんなさみしい たとえ さみしいと 気がつかなくても だって私たち ひとりひとり違うんだもの さみしいを 愛する人もいる。 さみしいを 味わうひともいる。 さみしいってだめかしら。 わたしは さみしいが すきなのに ひとはみんな 恋しい 誰もが誰か…